複雑性悲嘆のための筆記療法(ITCG)について

ITCGプログラムとは?

大切な方との死別後、多くの人たちは心身の不調や不眠を抱えながら毎日を過ごしています。しかし、なかなか治療やカウンセリングに通うことができなかったり、人に会うことを避けてしまうことがあります。出かける元気がわかないことや、新しく人に会うことで大切な方の話をすることが苦痛だったり、わかってもらえないのではと不安に感じたりすることもあるかもしれません。また家事や、育児、介護や仕事などが忙しくて、現実的に病院に行ったり、カウンセリングに行く時間がとれない方もいるでしょう。

2006年にチューリヒ大学のワグナー(Birgit Wagner)博士は、複雑性悲嘆の症状を持つ人たちに対して、インターネットを通じて筆記課題を用いた複雑性悲嘆のための認知行動療法(Internet-based Therapy for Complicated Grief, 以下ITCGプログラム)のドイツ語版を開発しました。この心理療法は、悲嘆の軽減に役立つこと、面接で行うカウンセリングに比べて改善効果が高く、中断する割合が低いことが報告されています。

このプログラムでは、複雑性悲嘆の症状が現在の悲嘆のプロセスが妨げられている状況を、自然な形で適切に流れるように進めていくことを目的としています。

では、どのような状況が「悲嘆のプロセスが進まないでいる」のでしょうか?

それは苦痛な思いに妨げられて亡くなった人の様々な思い出を振り返ることができずにいる状態です。たとえば大切な人のつらかった記憶を思い出さないようにしたり、そのことについて考えるのを避けようとする場合などです。つまり、亡くなった人を自分の心の中におさめることができないともいえます。

このプログラムでは筆記課題を行う中で、その記憶を表現し、思い出を整理していきます。

目標

このプログラムのめざす目標は以下の4点です。

  1. 亡くなった人のよい部分の記憶に気持ちを集中し、より無理のない方向で思い出すことができること。また死別の経験を自分自身の人生の中におさめて、新しい人生を歩んでいけること
  2. 罪悪感や自責感のような考え(例えば死に対する責任感など)に疑問を投げかけて、もう一度考えてみること
  3. 亡くなった人を自分の記憶の中で大事にした上で、亡くなった人を悼むための儀式や活動をすすめること
  4. これまでの進展を振り返り、将来を予測して、亡くなった人がいない中での新しい人生の目的を作っていけること

進め方

このプログラムでは、すべてのやりとりを電子メールで行います。参加者は約6週間程度の期間にわたって、週に2回、各45分でパソコン画面において計10回の筆記課題を行い、送信します。担当者が返信および次回の課題内容の提示を行います。

担当するのは死別を経験された遺族の方を含む様々な年代、疾患の方達の臨床経験がある臨床心理士等です。全回にわたって同じ担当者が対応します。筆記内容はパスワードを用いた添付ファイルで送信されます。研究グループ以外の者が筆記内容をみることはありません。

このプログラムは文章筆記による心理療法であるため、遠方の方や外出のむずかしい方にも参加していただくことが可能です。また筆記内容をいつでも振り返ることができます。治療研究に参加の方には、電子メールまた研究専用電話での連絡が可能です。

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